元請け業者等との約定によって加重された損害賠償責任 請負業者賠償編
どこの保険会社に限らず、請負賠償責任保険で支払われるのは、
「契約者が法律上の損害賠償責任を負担することにより被る損害に対して、
保険金をお支払いします。」となっています。
これは逆に言えば、
「法律上の損害賠償責任が契約者にない場合、保険金を支払わない」
ということです。
損害保険は契約者の法律上の賠償責任を肩代わりするものです。
また法律上の賠償責任は、「現状復旧」が基本ですので、修理可能な物品は
修理対応が前提です。
例としてよくお話しするのが、仮に新車で1000万円のベンツにたいして
追突事故を起こした場合、修理で元通りにすることが可能であれば、
保険で新車を買いなおすことは、認められません。
しかし工事現場では、その善悪は別にして、さまざまな契約上の責任が
付きまといます。
発生するすべての出来事を「法律」に基づいて運用していたら、円滑に
現場は進まないのかもしれません。
そこに、法律上に沿うことが前提の賠償責任保険とギャップが生まれる
ことになります。
最たるものは「違約金」でしょう。
・不正行為
・工事遅延に対する違約金(特約で補償できるケースがあります。)
・業者間取引上、取り決めを行ったもの
等、ありますが、これらの部類のお金は免責とする条項です。
よくあるケースとして、家電量販店から請け負うエアコン工事で、
家電量販店から支給されたエアコンを搬入の際に誤って落とし、
傷つけてしまった場合。
部品交換すれば、新品同様に元通りになったとしても、家電量販店に
よっては、支給材破損の場合、新品の弁償をすることが条件になって
いることがあります。
このような場合、保険で新品に買いなおしをすることはできません。
また、工期が延長している工事遅延に関して発生する損害は、
「工事遅延損害補償特約」などで補償されますが、
・対象工事の請負契約書において約定した履行期日の翌日から起算して
6日以上の工事遅延が発生し、その結果、対象工事の請負契約書の遅延
規定に基づき記名被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって
被る損害。
(民法第420条に定める損害賠償額の予定としての違約金に限り、記名
被保険者と発注者の間の取り決めにより違約金と別個に支払う違約罰は
含まない。
次の①から④までをすべて満たす工事で、「原因事故が発生してから
履行期日が短縮された工事」または「原因事故の発生の有無を問わず、
工事請負契
約が解除された工事」を除きます。
①記名被保険者が単独で元請負人となる工事
②原因事故が生じた日の翌日から起算して30日以内に履行期日が到来す
る工事
③対象工事に請負契約書が存在し、遅延規定が定められていること
④履行期日が年月日単位で請負契約書に定められている工事
など、かなり厳しい支払い条件が入ります。
違約金に関しては、損害保険でのリスク転嫁は難しいものがありますので、
自社でリスクを抱える体制を整えることが肝要です。
