交差責任補償について
元請け業者が保険に加入しているから大丈夫。
という話を下請け業者の立場の会社からよく聞きますが、
事故・保険の内容によっては、補償が効きません。
ここでは保険会社の担当者でも、難易度の高い交差責任について
説明していきます。
賠償責任保険は、「第三者」への対人対物賠償を行う保険ですが、
事業用の賠償責任保険では、
一つの業務を完遂する目的で行為に参加した者同士は「第三者」
ではないという考えがあります。
なかでも請負業者賠償責任保険では、
すべての下請負人を被保険者とし、元請負人と下請負人あるいは
下請負人相互間の事故(交差責任)を不担保である旨を明確化しています。
つまり、元請業者も下請業者も、それぞれに被保険利益が有り、
被害者という立場になりづらい。
被保険者相互間の事故、元請け業者 下請け業者間の事故などは、
任意労災や建設工事保険などで補償するリスクがほとんどで、
賠償責任保険ではほとんど対象外となります。
しかし、次に掲げるようなケースについては、交差責任担保特約を
付帯することで、被保険者相互間の賠償責任についても一部補償する
ことができます。
①記名被保険者が表の「元請業者」の場合
(a) 被保険者の範囲
表の記号の意味は「◎:記名被保険者」「○:追加被保険者」「×:被保険者ではない」である。
上記表の登場人物 |
交差責任担保特約条項 |
||||
非付帯 |
A
(One-Way) |
B
(Both-Way) |
C
(Full-Way) |
||
発注者グループ |
発注者 |
× |
○ |
○ |
○ |
請負業者
グループ |
元請業者 |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
下請業者A |
○ |
○ |
○ |
○ |
|
下請業者B |
○ |
○ |
○ |
○ |
(b) 担保範囲
表の記号の意味は「○:有責」「×:免責」「-:被保険者ではないため保険対象外」である。
表の
矢印の
番号 |
加害者 |
被害者 |
交差責任担保特約条項 |
|||||||
非付帯 |
A
(One-Way) |
B
(Both-Way) |
C
(Full-Way) |
|||||||
身体
障害 |
財物
損壊 |
身体
障害 |
財物
損壊 |
身体
障害 |
財物
損壊 |
身体
障害 |
財物
損壊 |
|||
① |
発注者 |
元請 |
- |
- |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
② |
発注者 |
下請 |
- |
- |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
③ |
元請 |
発注者 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
④ |
下請 |
発注者 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
⑤ |
元請 |
下請 |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
○ |
⑥ |
下請 |
元請 |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
○ |
⑦ |
下請A |
下請B |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
○ |
下請B |
下請A |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
× |
○ |
②記名被保険者が表の「下請業者A」の場合
(a) 被保険者の範囲
表の記号の意味は「◎:記名被保険者」「○:追加被保険者」「×:被保険者ではない」である。
交差責任担保特約条項を付帯したとしても元請業者、下請業者Bは、被保険者ではなく他人となる。
表の登場人物 |
交差責任担保特約条項 |
||||
非付帯 |
A
(One-Way) |
B
(Both-Way) |
C
(Full-Way) |
||
発注者グループ |
発注者 |
× |
○ |
○ |
○ |
請負業者
グループ |
元請業者 |
× |
× |
× |
× |
下請業者A |
◎ |
◎ |
◎ |
◎ |
|
下請業者B |
× |
× |
× |
× |
(b) 担保範囲
表の記号の意味は「○:有責」「×:免責」「-:被保険者ではないため
保険対象外」である。
表の
矢印の
番号 |
加害者 |
被害者 |
交差責任担保特約条項 |
|||||||
非付帯 |
A
(One-Way) |
B
(Both-Way) |
C
(Full-Way) |
|||||||
身体
障害 |
財物
損壊 |
身体
障害 |
財物
損壊 |
身体
障害 |
財物
損壊 |
身体
障害 |
財物
損壊 |
|||
① |
発注者 |
元請 |
- |
- |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
② |
発注者 |
下請 |
- |
- |
× |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
④ |
下請A |
発注者 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
⑥ |
下請A |
元請 |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
⑦ |
下請A |
下請B |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
上記④~⑦のように、下請け業者が保険に加入することで、
交差責任担保特約を付帯しなくても、あらゆるケースの補償を
受けれる状態となります。
また
近年は、「交差責任補償」がデフォルトでセットされている
総合賠償責任保険
商品も存在しますので、検討してみてください。