エアコン工事 施工ミスをカバーする工事保険について
1.エアコン工事業者にとってのリスクとは?
- 作業中に誤って道具をぶつけ、施主クロスを傷つけた。
- 運搬中の落下等により支給されたエアコン自体を破損。
- 基盤を濡らし、エアコン機能が一部動作しなくなった。
- 排水ドレンの勾配を取らずに施工し、壁内、室外機への漏水被害。
- 過電流を流したことによる、施主家電品への損害。
- 取り付けする壁面の内部に配線や筋交いの位置を確実に把握できず、
配線や筋交いを損傷・破壊してしまった。
弊社は建設業専門の保険を扱う保険代理店のため、多業種のお客様との
長年の取引が有りますが、 例年、事故件数上位となるのがエアコンにま
つわる保険事故です。
これは繁忙期が夏に偏り、短期での大量作業や、参入障壁が低く、
作業に不慣れな業者の新規参入が多いことも要因と思われます。
そのため、「繁忙期の夏だけ保険を掛けたい」という要望をもらう
こともありますが、事故が発生するのは夏だけとは限りません。
施工ミスにより
少量の漏水が長期間にわたって継続することもあり、
現状復旧費用が
高額になることもあります。
大量に設置したエアコンのうちの一台にフレアナットの締め付けが適正トルクで行われていないものがあり、設置半年後に漏水事故が発生する
というようなケースも珍しいことではありません。
ゆえに契約を検討するのは必ず年間契約が前提となり、作業中引き渡し後
の賠償事故、どちらも補償する賠償責任保険を選ぶのが鉄則となります。
※工事目的物の保険は作業中のみの補償となります。
・発注先・仕事の請け方でもリスクが変わる。
新築工事の際であれば、図面入手が可能なため壁内構造を把握してから、
作業することができます。
家電量販店業務・引っ越し業務等の仕事の場合は、建物図面等の入手ができずに、壁内構造を正確に把握することができないことがあります。
柱、梁、筋交いに誤って穴をあけた場合、取り返しのつかないことになります。
万一の場合、保険でのカバーも可能ですが、施工前の壁内構造等の把握は慎重な調査が必要です。
・事故報告件数ランキング

エアコン自体の補償について
エアコンの工事保険の中でも、取り付け作業中、お施主のクロスを傷つけた。
引き渡し後に漏水し、階下に漏水被害を発生させた等、作業中・引き渡し後
の対人対物賠償は必須となる補償ですが、盲点になるのはエアコン自体の損害です。
エアコンを落として壊した。基盤を濡らし、基盤交換が必要になった。などの
エアコン自体の補償が必要な場合、そのエアコンが「支給品なのか、自分で仕入れたエアコンなのか」
それぞれ契約者の仕事の仕方で必要な補償が異なってきます。
量販店・メーカーなどからエアコンを支給され、取り付け作業のみを請け負う
ような手間請けの場合、その支給されたエアコンを補償する、支給材損壊
を補償する特約や、受託品を補償するプランなどで支給材・受託品補償を追加する必要があります。
逆に、自社で仕入れたエアコンの補償が必要な場合、賠償責任保険ではなく、建設工事
保険や組立保険、工事物損害補償等の物保険が必要となります。
※支給品を追加補償させることも可能。
これらの補償は工事中のみの補償となり、引き渡し後の補償ではありません。
引き渡し後に、ガス漏れでエアコンが冷えない等、他物損壊※の無い事故の
場合、補償を得ることが難しくなるので、注意が必要です。
※第三者への対人対物賠償
他物損壊が発生していないケースで、支給エアコン、仕入れエアコン自体の
引き渡し後補償等、工事保険に加入していも、カバーされない事例もある
ため、保険を妄信することは避けなくてはなりません。
施工台数が多い場合などは特に、機種ごとの商品仕様図、取扱説明書、
施工説明書確認を確認、徹底することが必要です。
仮に40台エアコンの取り付け作業を誤った方法で行った場合、
40台の是正工事費用が必要となり、目も当てられないことになって
しまいます。
また、賠償責任保険は契約者の法律上の賠償責任を保険会社が
肩代わりするものです。
逆に言えば、家電量販店から支給材として預かったエアコンの破損について、法律とは別に、当事者間で取り決めた請負・委任契約等があってもその内容が保険で必ず補償されるものではありません。
エアコン・家電の場合、支給されたエアコン・家電を壊した場合、
修理が可能であっても、買取交換する内容となっている場合があります。
その場合、保険会社の認定額と、支給先からの請求額に差異が発生し、差額を
自己負担せざる負えない可能性があるので、注意が必要です。
◆エアコンで選ばれる6つの工事保険

◆エアコン工事保険の選び方と比較ポイント
高額な仕入れエアコン・支給材を扱う、現場に大量に保管するケースがあり盗難リスクがある場合、
作業対象物への補償検討をしたか。
作業中・引き渡し後にわたって切れ目なく補償がついているか。
管理財物損壊補償「仕事を遂行するにあたり、現実かつ直接的に作業を行っている財物」
への補償漏れがないか。
想定される被害金額が、自己負担できる程度の損害であれば、わざわざ保険加入する
必要は有りません。
4. エアコン工事業者が保険に加入しないリスク
エアコンの取り付けや撤去には、高所作業、建物への穴あけ作業、電気・配管
工事など、多くのリスクが潜んでいます。
その中で、万が一の事故や損害が発生した際、保険に未加入であることの代償
は非常に大きなものになります。
1. 損害賠償の全額自己負担リスク
エアコン工事中に壁や床を傷つけてし
まった場合や、配線工事で火災・漏電を引き起こした場合、お客様への
賠償責任が発生します。
こうした損害が軽微なものであればまだしも、被害が大きければ数百万円
単位の賠償になることもあります。
工事保険に加入していなければ、これらの損害はすべて自己負担となり、
経営を直撃します。
2. 信用の低下と契約機会の損失
近年では、元請業者や顧客から
「工事保険に加入していること」
が契約条件として求められるケースが増えています。
特に法人やハウスメーカーとの取引では、保険証券の提示を求められる
ことが一般的です。
保険に加入していないことで受注チャンスを逃してしまうのは、大きな損失と
言えるでしょう。
3. 従業員の安全と法的責任
万が一、従業員が工事中にケガをした場合、
労災保険や業務災害保険などに加入していなければ、病院で健康保険も
使えず、治療費・休業補償等、全額自己負担する必要があります。
さらに、労災保険の未加入は法律違反となり、行政指導や罰則の対象
になるリスクもあります。
4. 長期的な経営リスク
突発的な損害賠償や事故によって資金繰りが
悪化すれば、事業の継続そのものが難しくなる可能性もあります。
また、事故が公になった場合、ネット上の口コミや評判に影響し、新規
顧客の獲得にも支障が出かねません。
工事保険は「事故が起きてから入る」ものではありません。
事故が起きた時点で未加入であれば、取り返しのつかない損失を招くこと
になります。
全額経費で落とせる工事保険は、プロの工事業者として保険での備えを
整えておくことが不可欠です。
比較項目 | 保険加入あり | 保険未加入 |
---|---|---|
損害賠償への対応 | 保険で補てん(限度額あり) | 全額自己負担 |
顧客からの信頼 | 証券提示で安心感アップ | 信用を失い契約を逃すことも |
事故時の対応スピード | 保険会社と連携し迅速対応 | 自社判断で遅れるケースあり |
経営リスク | リスク分散で安定経営 | 1件の事故で経営悪化の可能性 |
5. エアコン工事保険の加入手順とおすすめの保険会社と加入までのステップ
- 自社のリスクを分析し必要な保険を選定
- 各保険会社のプランを比較・見積もり取得
- 必要書類を準備して申し込み手続き
- 契約完了後、補償内容をしっかり把握。保険でカバーできないリスクの対処方法を検討
6.まとめ:エアコン工事業者にとって保険は「必須の投資」
エアコン取付工事は、日常的に行われる比較的身近な作業である一方で、
建物への損害や人身事故、施工ミスによる後日のトラブルなど、想定外の
リスクが常につきまとう業務でもあります。
とくにすでに居住中・オフィス使用されている現場での作業は、室内機や壁、
床材といった高額な設備・内装、施主の所有物に影響を及ぼす可能性が
あるため、ちょっとしたミスが損害賠償に発展するケースも少なくありません。
こうした状況に備える手段が、まさに「工事保険」です。
中でも、「請負業者賠償責任保険」や「生産物賠償責任保険(PL保険)」
は、施工業者にとって不可欠な保険です。
この保険が要となり、業務リスクを大幅に軽減できます。
また、昨今では元請けや顧客から「保険加入済み業者かどうか」を契約条件
にするケースも増えてきており、信頼性の証明としても有効です。
工事保険は"万が一"のための備えであると同時に、"信頼されるプロの証"
でもあります。
これからエアコン工事業を本格的に展開していく方、あるいは既に携わって
いる方にとっても、事業の継続性と信用を守るために欠かせない選択肢と言えるでしょう。
